四万十からのつぶやき


Vol. 5 オー、マイバッグ!
Mes chers sacs de caisse!

Hiroko Yamasaki


 "On ne recolte que ce qu'on a seme!"という一文が印刷された大きめの布バッグをカバン売り場で見かけた。「まいた種しか収穫しない」と主張するバッグ。"recolter ce qu'on a seme" 「まいた種を刈る」という慣用句でもあるが、この場合どう考えても素直に訳した方が正しいのだろう。実際種をまく絵もプリントされていたこともあるが、その袋はスーパーのレジ袋の代わりのオシャレな「マイバッグ」になりそうで環境を意識していることは明らかなのである。

 数年前から全国的にゴミ減量化を目的としたマイバッグ持参・レジ袋廃止を唱える傾向はあり、杉並区の「レジ袋」税は話題になった。杉並区で消費されるレジ袋は年間1億6,900万枚、石油に換算すると350万リットル。その処理に約1億円の税金を使っているそうだ(平成13年10月発表データ)。高知県では毎年10月を「マイバッグキャンペーン」月間としており、国体があった平成14年10-11月の2ヶ月間は例年以上に力を入れて「マイバッグキャンペーン」を行った。果たして効果は?平成13年高知県のキャンペーンアンケート結果ならHP上で閲覧できる。

 私はといえば、最近はマイバッグを持参しなくなった。帰国してしばらくはいつも持って行っていたが、今はスーパーに買い物に行く回数が減ったのでレジ袋はゴミ袋として貴重になっている。私のような人が多いらしく、ゴミ袋として欲しいからレジ袋はもらいたいというのが多くの消費者の本音のようだ。

 「地球にやさしい」というフレーズが登場して随分になり、「自然と人の共生」という言葉もありきたりのものとなった。地球にやさしい低公害車の好調な売れ行きは、このご時世、低燃費であることと税の優遇措置の後押しがあるからこそだと思う。太陽光発電もいいことは分かっていてもそう簡単に我が家に取り入れられるものではない。原子力発電所の問題で電気不足が叫ばれている今夏なら、少しは太陽光発電のプレートを備えた屋根が増えるかもしれない。

 私が観察する限り、今年になってスーパーで買い物袋を持参している人が以前より増えたことは確かだ。しかし、それが全体につながるにはまだまだ時間を要することも確か。中には、マイバッグの持参によってポイントを得られるシステムがあるからこそ、という人もいるだろう。近くのスーパーでは独自のスタンプカードを作っており、20回持参=100円になる。杉並区のエコシール制度では、買物袋持参で200円の買物ごとに消費者に4円還元される。うち2%が区から加盟店に補助される。レジ袋1枚5円の税収があったとしてもこのシステムをバックアップする補助金で、「地球にやさしい」他の取り組みができるのでは?とも言いたくなったりする。

パリ サンルイ島にて
パリ サンルイ島にて


 フランスのスーパーでは、買い物客自らが購入する商品をカゴから出して"ベルトコンベアー"のようなレジに並べる。レジ係は商品を通し代金を請求する。客はレジを通された商品を自分で袋に詰める。レジ袋はそのベルトコンベアーの終わりに束で置かれていて、客は好きなだけ勝手にとることができた。

 1996年、そんな状態が急変した。


 はじまりは、街の大きな看板広告。テレビのCMコマーシャル。雑誌や新聞に掲載された広告。非常に衝撃的だった。

 美しい海岸の岩間に波に打ち上げられたスーパーのレジ袋。
 大自然の緑の中に落ちている白いレジ袋。
 この2パターンの美しい風景に添えられる言葉は、
 『私たちはこんなところで○○(某スーパー名)を見たくありません』だったか、
 『こんなところまで有名になりたくありません』だったか、すでに記憶も不確か。

 とにかくショッキングな広告は、私に四万十川の川岸に引っかかっている白いビニール袋を連想させた。広告は某スーパーがレジ袋の完全廃止を決めたことを告げ、一定期間ののち完全に姿を消すので消費者はレジで新しい袋を買ってそれを利用してください、と伝えていた。
 本当に大きなそして丈夫なマイバッグ。価格は、1フラン(当時20-23円)。袋に印刷されているのは広告に使われた美しい景色とスーパー名。ポリエチレン製で破れたり破損した場合はそれをレジで無料交換してくれる。回収された袋はリサイクルされゴミ袋に生まれ変わる。

 レジ袋は支給されないのだから、客はそれを買わざるを得ない。1フランでも無駄銭は使わないのがフランス人。買わない人はリュックに詰め込んだり、段ボールをもらって入れるか、カーゴごと車まで行き商品をそのまま車のトランクに積む。もっと反発が出ると思っていたが結構すんなりとフランスの日常に浸透していった。まもなく、この大手スーパーに他店も追随した。

 戦略は見事だった。レジ袋にかかる全店舗の費用や廃止に伴い削減される経費を綿密に算出し、資源の節約はもちろんだが海を汚しているビニール袋で窒息死する生き物たちをこれ以上増やさないためにも!と、莫大な費用をかけ大々的に宣伝し短期間で成功させた。当時、このプログラムの責任者はメディアにひっぱりだこだった。具体的な数字も報道されていたが覚えているわけもなく、昨年末はるばる某社に問い合わせた次第。[そのかいあってか?!今年サイトがリニューアルされ情報が充実したので興味のある方はそちらもご覧ください。ちなみにフランスでは年間170億枚のレジ袋が使用されているそう。] その大手スーパーでは以前は年間10億枚のレジ袋が使われていたが、現在は5千万枚に、重量にして6,500トンから2,400トンに減少したそうだ。


 この激変を実際に味わった私には、「レジ袋」税やお買い物袋ポイントシステムがどうしても生ぬるく映る。そのうえ、近くのスーパーで売られている「マイバッグ」は500円もする。本当に普及させようとしている姿勢とは受け取れない。本気で浸透させたいならスーパー自体が自社の広告費の一部とみなしロゴでもオシャレに入れて50円くらいで売ってくれるといい。行政はそれをサポートするといい。売られている立派な「マイバッグ」は頑丈で大きいので、通勤カバンに忍ばせておくにはじゃまになり、仕事帰りにマイバッグで買い物に寄ることにはならないのだ。

E.LECLERC. の現在のレジ袋

E.LECLERC. の
現在のレジ袋


 「構造改革」という言葉が今なお意味を持っているのか想像しがたいが、どんな分野であろうと変えようと思えばできることはある。要は本気かどうか、そして描いた将来像に自信を持てるかどうかだ。このスーパーはやるべきだと信じて押し進め成功した。アンケートによると8割以上の消費者がこの企業は環境保護や資源の節約に貢献していると考え、7割以上が少なくとも一度は袋を買ったことがあり、わずかなお金を払って袋を買うというのは形だけのものだと感じている。

juillet 2003

photo by Yoshihito Nakano

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